2025年6月15日日曜日

ケインズが考えた「仕事の序列」3番が実業家で2番が科学者…では意外な1番は?

ケインズが考えた「仕事の序列」3番が実業家で2番が科学者…では意外な1番は?

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ケインズが考えた「仕事の序列」3番が実業家で2番が科学者…では意外な1番は?

経済学者ジョン・メイナード・ケインズ Photo:Bettmann/gettyimages

 1936年、「金利操作と財政出動によって景気をコントロールできる」と書いたケインズ。その言葉は、21世紀のいまも為政者の心をつかみ続けている。


だが、経済学者の水野和夫が注目するのは、ケインズの1930年論文のほうだ。そこでは「100年後にゼロ金利社会がやってくる」という。

そしてそれは、明日の心配が要らない豊かな社会なのだとか。幸福を考える宗教学者・島田裕巳との対談をお届けする。

※本稿は、水野和夫、島田裕巳『世界経済史講義』(ちくま新書、筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● ケインズが説く「人間の序列」 3番は実業家、1番は?


  島田 ケインズの『一般理論』(編集部注/『雇用・利子および貨幣の一般理論』)はよくわからない本で、私も読もうと思って読めなかったんですが、ケインズは基本的にどういう考え方をしていた人ですか。


  水野 ある先生にケインズの『一般理論』は日本語が難しいですよねと言ったら、その先生は「いや、英語で読むともっとわからない」と。ケインズは英文も悪文だということです。


  島田 わかりやすい英語で書かれていれば、どなたかがちゃんと日本語にできると思うんですよね。ケインズってどういう人だったんですか。


  水野 マルクスは周りに、エンゲルスの他にも支援者がいました。ケインズはもっとすごくて、当時のケンブリッジの倫理学の先生とか、芸術の先生とかいろんな人が集まる「ブルームズベリー・グループ」に参加して議論しています。

  あらゆるジャンルの本、数学も駆使して確率論まで書いています。大蔵省の試験で2番だったそうです(編集部注/高等文官試験で1位の合格者が大蔵省入りしたため、2位だったケインズはインド省に配属された)。ケインズ自身は芸術家になりたかったのですが、なれなかった。

  ケインズの考え方によると、人間の仕事は序列的に分かれており、クリエイティブな仕事、つまり芸術家が最上位に位置します。次に科学者、たとえばニュートンのような人物がいます。

  芸術家は直感を通じて善に至るとされます。道徳的な善、つまり良い行いをすることに至るというのです。しかし、自然法則を発見する科学者は、必ずしも良き行いに結びつくわけではありません。原子爆弾を作ったりしますから。そして3番目が実業家で、最も下位に位置します。

  労働者はどうなるんだと思いますけど(笑)。


● 100円の作品を1万円で買う 「善き行動」を自ら実践


 水野 ケインズは、実業家たちは本当は芸術家になりたかったけど、それが叶わなかった悔しさからお金儲けに邁進すると考えていました。彼は、貨幣愛は企業家の鎮静剤だと言っています。


 貨幣愛は際限がなく、一種の病気だと見ていました。つまり、ビリオネアは精神的に病んでいる病人とみなされるわけです。


 企業家にとって、貨幣はアヘンのような存在だったということです。


 島田 ケインズは自身も投資家じゃないですか。


 水野 投資家なのですが、儲けたお金は劇場を作るなど、すべて還元していました。


 島田 メディチ家みたいなことをやってるんですね。


 水野 大負けもするんですけど、最終的には大勝ちして、劇場を作ったり、アーツカウンシル(編集部注/英国芸術評議会)なんかを作ったりしています。


 貧しい画家を直接支援すると彼らに引け目を感じさせてしまうので、ケインズは画廊に行って「この作品はすごい」と評価し、たとえば100円の作品を1万円で買うことで、画家に自信をつけさせ、生活も支援していました。彼には、そうした貴族的な一面があり、善き行動を自ら実践していました。


● 心臓外科医のような経済学者 100年後は歯医者になる?


 水野 ケインズの予見力に驚かされるのは、「100年後には、経済学者は歯医者のような存在になるだろう」と書いている点です。最初はその意味がわかりにくいかもしれませんが、行間を読むと、1930年代の彼は「私は今、心臓外科医として緊急の処置をしているのだ」と考えていたのだと思います。


 つまり、今まさに死にそうな人を救うために、『一般理論』で有効需要を生み出す政策提言を行ったということです。


 しかし、100年後には経済は世の中の中心問題ではなくなっている、と彼は予測していました。虫歯で命を落とす人はまずいませんが、虫歯があればおいしい食事を楽しめない。


 ケインズは労働よりも自由時間を大切にしており、歯医者のような存在がその自由時間を支える役割を果たすと考えたのです。


水野 ケインズはまた、「重大な戦争と顕著な人口増加がない限り、経済問題は100年以内に解決されるか、少なくとも解決の目処が立つだろう」と述べています。現代の先進国では多くが出生率2.0を下回っており、第3次世界大戦もまだ起きていません。


 一方、マルクスの時代には経済が下部構造であり、政治や文化を決定していた。


 ケインズはそれを意識しながら、100年後に経済がこの土台から外れると考え、「心臓外科医ではなく、歯医者のような存在になる」と予言したのでしょう。


 歯医者は町の一部として人々の健康を維持し、経済学も人間の生死を左右するような学問であってはならないと、1930年の論文で述べています。


● ゼロ金利で豊かになっても 不満な人は「貨幣愛病」


 島田 どういう道筋をたどって、心臓外科医が歯医者になるのでしょうか。


 水野 まず、100年後にはみんなゼロ金利になるだろう。


 島田 それを、ケインズは予言しているんですか。


 水野 予言しています。ただし、彼がその根拠を明示していないのです。もしかしたら私が見落としているのかもしれませんが、ケインズにはもちろん根拠が頭の中にあったはずです。ただ、それを明かさない。天才は往々にしてそういうものです。


 私のような人間だと、根拠をしっかりと示さなければなりません。そうでないと、質問攻めにあったり、「いい加減なことを言っている」と批判されてしまいます。


 ケインズが言ったことに関しては誰も「いい加減だ」とは言わない。彼が言うなら、それに間違いはないとみんな思うんです。


 私なりに説明すれば、ゼロ金利の理由は、資本は必ず過剰になるからです。ゼロ金利が実現すると、現在と将来の価値は同じになるため、今日を我慢して明日に期待する必要がなくなります。


 島田 昔の定常状態に戻る。


 水野 ケインズが言っている「定常状態」というのは、ある意味で経済の最終形態とも言えます。つまり、これ以上資本を増やさなくてもよい状態が訪れるということです。それが100年後に訪れると、ケインズは1930年の時点で予見していたのです。


 なぜ100年後なのか、少し考えさせられますよね。ゼロ金利がその兆しであり、現在が最も豊かな生活を送っているという証しでもあります。「まだ満足できない」という人は、ケインズに言わせれば「貨幣愛病」にかかっているのです。



水野 ゼロ金利社会になると、明日のことなどまったく気にかけないような社会が訪れるとケインズは述べています。


 島田 1930年から31年にそれを言ったわけですから、もうすぐですね。


 水野 はい、もうすぐです。日本は先進国の中で最初にゼロ金利に突入した国となり、ケインズの予測がかなり当たっています。現在、日本の10年国債利回りは1.0%以下ですから、実質的にゼロ金利状態です。


 土地は人間が作れないため、土地の収益性よりも過剰になった資本の収益性の方が低くなる。これによって資本の希少性が失われ、ケインズが言う「資本家の安楽死」が起こるのです。ケインズは、資本主義は過渡的な現象だと見ていました。


● 日本人は働きすぎ 労働時間より自由時間


 水野 ケインズの解説をしている有名な宇沢弘文先生が、「ゼロ金利というのは、流血を伴わない社会改革だ。」と訳しています。資本家は資本を持っているがゆえに働かなくていい。


 当時の資本家は利子収入です。イギリスの貴族が、囲い込み運動で土地を工場主に売ってイギリス国債を買うのが当時の資本家です。国債の利息だけで優雅な生活ができる人たちです。


 でもゼロ金利になると、革命をしなくても血を流さなくても、資本家は「安楽死」します。


 島田 ケインズは労働時間についても予言してますね。


 水野 1週15時間労働で必要なものが全部供給できるようになると言ってます。現在、日本では週40時間、残業を含めれば50〜60時間ほど働いてますから、働きすぎですね。ケインズは、労働時間を減らして自由時間を増やすことが人間にとっては望ましいことだと言っています。


 ただ、人間の原罪として、人間は常に働かなきゃいけないように訓練されていることをケインズは懸念しています。急に自由時間が多くなったからといって、その時間を自由に使えるのかと。人間は心配性でゼロ金利になってもやっぱり相変わらず働いてるのではないのか。


 まさに今の日本のことを言っていますね。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2a33de57926d81f1dff3675306e917ae9047286c?page=1

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